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◆ 単純な 「正邪」 対立ではない。メディアは公正、客観的に報道せよ

コロンブスも「憎悪の象徴」に…
NYで銅像撤去の議論
「先住民を虐殺」

2017.08.26
(www.sankei.com/world/news/170826/wor1708260043-n1.html )

存続が議論されている米ニューヨーク・マンハッタンのコロンブス像(上塚真由撮影)
存続が議論されている米ニューヨーク・マンハッタンの
コロンブス像(上塚真由撮影)



米南部バージニア州シャーロッツビルで起きた
白人至上主義者反対派の衝突事件を受け、
奴隷制度存続を訴えた南北戦争時の南軍兵士像を
撤去する動きが米各地で広がる中、米ニューヨークでは、
米大陸を “発見” したコロンブスの像も、
撤去の議論に上がっている



ニューヨークのデブラシオ市長は23日、
市内にある「憎悪の象徴」となる像などをすべて見直すと発表。

専門家による委員会を立ち上げ、
90日間かけて存否を議論することにしている。


その対象として、
マンハッタンのセントラルパーク南西部の角にある
コロンブス像が浮上。

コロンブスの「米大陸到達400周年」記念として
1892年に建てられたもので、
周辺の広場とともに観光名所となっている。


米国ではコロンブスを英雄視する声がある一方、
先住民の土地を奪い、虐殺したなどとして
歴史的評価が割れている。


コロンブスの出身地であるイタリアの移民が像撤去に反対、
米紙、ニューヨーク・タイムズに
「コロンブスの実績が不当に評価されている」
との内容の広告を一面に出すイタリア系米国人団体もある。
【ニューヨーク=上塚真由】



【正論】
米の「人種差別デモ」
単純な「正邪」対立ではない
メディアは公正、客観的に報道せよ
元駐米大使・加藤良三

2017.08.28
(www.sankei.com/column/news/170828/clm1708280006-n1.html )

加藤良三氏
加藤良三氏


近年のスマートフォンのカメラ機能の高度化には驚くべきものがあり、
専門家さながらの撮影が誰にでもできる。

しかし、レンズは大概標準レンズで、
特別の広角、まして望遠機能は備えていない。

皆、同じポーズ、同じ図柄の撮影を繰り返す。

写真真実の一部を切り取るが、全体像は示さない


世の中のことをより良く理解するためには
広角、望遠の機能を補強する必要があり、
その役割を果たすのがメディアだと思う。

しかし、近年はメディアも同じような標準レンズを使って
「限界効用」の低い映像を量産している感があり、
プロフェッショナルとしての役目を十分果たしていないように感ずる。

自ら身を以て「事実」(ファクト)を追求し、
読者、視聴者に提供する精神が
衰退傾向にあるのではないかと危惧される。


正邪対立の単純な構図なのか


最近起こったアメリカのバージニア州シャーロッツビルでの
衝突事件の報道ぶりを見て、改めてその感を深くする。


日本のメディアの多く
「トランプ憎し」の感情(ないし、その受け売り)
を前提にした報道を繰り返した。

今回の騒ぎは
「白人至上主義者(悪)」対「市民グループ(正義)」、
すなわち単純な正邪対立だとする構図を描いた。

私にはトランプ氏を擁護する義理も動機も全くゼロであるし、
トランプ氏の大統領ぶりは異様だと思っている。


しかし、メディアには、
日本に居てはよく分からない騒動の発端経緯背景
もうちょっと掘り下げて、
公正、客観的に伝える責任があるのではないか。


阿川尚之教授(同志社大)の著作に示される通り、
シャーロッツビル
トーマス・ジェファソン(第3代大統領。民主党の祖とされる)が創った
南部の穏健、静謐(せいひつ)な学園都市だった。

その街の公園に
南北戦争の南軍司令官だったロバート・リー将軍銅像
1924年以来存在してきた。

リー将軍は南部はもとより北部でも尊敬された
「時代の英雄」「史上の重要人物」だと聞いてきた。


ごく最近その銅像を撤去・売却するとの決定市議会が行った。

さすがに、この決定に当たっては
州の司法を含めていろいろ慎重論、反対論もあったようだ。


撤去を主張した勢力は、
これ以前に銅像が所在していた公園(「リー・パーク」)を
「エマンシペーション・パーク」(解放公園)に改称させている。


この集団・勢力をアメリカの主要メディア
「(一方の)抗議集団に反対するグループ」
「カウンター・アクティビスト(反活動家)」
などと表現している。


問題は「寛容性」に対する挑戦


この勢力は何を目指すのだろう?

アメリカには南部を中心にして、
南軍の軍人の名を冠した公園、街路、ハイウェイ、軍基地を含む
諸施設、
学校(その中には日本人学生、研究者も行く
   ワシントン・アンド・リー カレッジといった質の高い大学もある)
など多数存在する。


およそ、南部または南部的なもの
として否定する立場を貫くのであれば、
名称変更から始まって際限のない騒ぎが続き、
結果として
アメリカ自身にとって貴重な歴史の教材が
失われることになりはしないか。

これは、
アメリカの伝統である寛容性
に対する挑戦ともなりうるだろう。


この集団
人種差別撤廃の主張
  (その根底に黒人の見せかけではない怒りのエネルギーがある)
を突き詰めれば、
やがては、ジョージ・ワシントンやトーマス・ジェファソンも
人種差別擁護者として糾弾されうるわけで、
この点に関する限りトランプ氏の言い分は正しいと私は思う。


今回のシャーロッツビル衝突を最初に仕掛けたのが、
最も筋悪な白人至上主義者を含むグループだったことは
不幸な事実だった。

またこの事態が発生する環境を作り出したのが
「大統領・トランプ」だったというのも正しかろう。


しかし、問題の本質は
「トランプ憎し」の感情の次元を超えるもの、
アメリカの歴史がどうなるかに関わるもの
ではなかろうか。


堂々巡りを始めたアメリカ


現象的には、
今回の名称変更、銅像撤去のような風潮への反発が
「大統領・トランプ」を生み出し、
そのトランプ氏への反発が騒動を招く
という堂々巡りをアメリカが始めているように見える。


これにけりをつける責任と能力はアメリカ以外にはない。


ただ、
アメリカの寛容性が失われることの世界的影響は
大きいだろう


中国の指導層や日本のリベラル左翼人士の多くも
子女をアメリカ留学に出していると聞く。

それはアメリカの寛容性と
それを基盤とする知的、科学技術的発展の底力に
信をおいての判断だろう。


この先、トランプ氏の支持率は一層低下し、
アメリカの信頼性がさらに失われる
との報道やコメントが続くと思われる。

しかし本当に知りたいのは
広角、望遠機能をフルに働かせて得られる
客観的事実とその分析である。

その役割の一端をメディアに期待するのが
私だけであるはずがない。
(元駐米大使 加藤良三 かとう・りょうぞう)



病むアメリカ、滅びゆく西洋
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超大国の自殺
――アメリカは、2025年まで生き延びるか?

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