◆ 北朝鮮の脅威 (4) 北のロケット弾売却先はエジプト 

北朝鮮情勢
北のロケット弾売却先はエジプト
米紙報道
対エジプト支援延期の原因か

2017.10.02
(http://www.sankei.com/world/news/171002/wor1710020024-n1.html )

米紙ワシントン・ポスト(電子版)は1日、
エジプト政府が昨年8月に拿捕した
北朝鮮国籍の船長らが乗る船舶から見つかった
北朝鮮製携行式ロケット弾約3万発
買い手がエジプト企業で、エジプトの軍部に売却するためだったと報じた。

米政府が今年8月、
「エジプトへの経済援助の中止と軍事支援の延期」
を決めた一因になったという。


国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会専門家パネルの調査結果に詳しい米政府当局者や西側外交筋の話としている。

米政府
同盟国であるエジプト北朝鮮軍事協力
問題視し、懸念を伝えていた。


携行式ロケット弾が収められていた木箱にエジプト企業の名前が書かれていたという。

北朝鮮による同兵器の密輸としては最多とみられる。

ただ、北朝鮮がすでに2300万ドル約26億円と推定される売却代金を得たかは不明だ。


国際社会
核・ミサイル開発による挑発を受けて北朝鮮への制裁を強化しているが、
同紙は専門家の見方として、
金正恩体制
エジプトイランミャンマーキューバシリアエリトリアのほか
2つのテロ組織への
安価な武器の密輸で利益を得ている
と報じた。 【ワシントン=加納宏幸】



宮家邦彦のWorld Watch
相変わらずの政治指導者
カイロのメリーゴーラウンドは回り続ける

2017.08.31
(http://www.sankei.com/world/news/170831/wor1708310004-n1.html )

昨年来日し安倍晋三首相(右)と握手するエジプトのシーシー大統領=平成28年2月、首相官邸(宮崎瑞穂撮影)
年来日し安倍晋三首相と握手する
エジプトのシーシー大統領
=平成28年2月
首相官邸宮崎瑞穂撮影



先週久しぶりでカイロから気になるニュースが飛び込んできた。

トランプ米政権が人権侵害や北朝鮮との不適切な関係を理由に対エジプト援助の減額と一部延期を決定、これにエジプト外務省が強く反発したという。

「あれあれ、相変わらずだなぁ」というのが筆者の率直な印象だった。

カイロは外務省入省後、筆者が1979年から2年間アラビア語を研修した思い出の場所。

余談だが、当時カイロ大学には小池百合子現東京都知事が留学していた。

なぜかエジプトとなると筆者は熱くなる。

もちろん気候も暑いが、人情も厚く、文化が良くも悪くも重厚だからだろう。


今回米国が供与中止・留保を決めた対エジプト援助の総額は以下の約3億ドルだ。


▽ 対外軍事融資は2017年度総額13億ドル中、6570万ドルを中止、16年度分約2億ドルを留保
▽ 経済援助は16年度総額1億5千万ドルのうち、3千万ドルを中止。


これに対し、エジプト政府は
「長年の戦略的関係を正しく理解していないことを示す決定だ」
と懸念を表明した。


エジプトの怒りはごもっとも。

本件が米高官筋情報として報じられたのは、大統領の娘婿クシュナー上級顧問のカイロ訪問直前だったからだが、米側の措置には経緯がある。

人権弾圧を懸念する議会の要請や政策的理由があることはエジプトだって百も承知。

通常なら、米政府は国務省、国防省などあらゆるチャンネルを通じて、エジプト側に事前通報するのだが、もちろんトランプ政権は「通常」とは言い難い。

これだけでも米外交当局が今も正常に機能していないことは明らかだ。


だが、筆者の「相変わらず」感はトランプ政権ではなくエジプトに対するものだ。

シーシー政権発足後も経済は停滞し、物価は上昇。

外貨準備が不足し、エジプト通貨の闇レートは暴落する。

解決にはポンド切り下げ、財政赤字削減、付加価値税導入、補助金削減、社会保障の充実、雇用促進などが求められる。

おいおい、これって筆者が研修した80年代に見聞きしたこととほとんど同じではないか。

さらに言おう。

2008年5月、当時のムバラク大統領も演説でこう述べていた。


改革は、投資、雇用などに対する需要拡大にあわせて継続されなければならない
▽ われわれは、生産性や輸出を拡大し、競争力のある技術を改善する必要がある
▽ われわれは、腐敗に立ち向かい、官僚主義を排除し、経済成長に伴う富の公正な分配の達成にさらに注意を払う。


もうお分かりだろう。

筆者の知る限り、エジプトの政治指導者は、少なくとも過去30年、恐らくは過去数百年間、こうした経済的困難や社会的不公正と戦ってきた。

筆者の対エジプト「相変わらず」感の根源はここにある。


2011年、ムバラク大統領が退陣した後、日本のある学者はこう述べた。

既存の中東専門家はエジプトの民主化を読み誤った。

・ 同国の政治は移行プロセスに入る、
・ この政治理念や制度がエジプトモデルとしてアラブ世界に影響を与える、
・ 同国は既にこの方向に動き始めており、大きく脱線することはない。


これを聞いた筆者はこうつぶやいた。

「エジプトが劇的に変わるはずはない。必ず軍部が戻ってくる」。

どちらが正しかったかは問題ではない。

今回のニュースを聞いても驚かない。

カイロのメリーゴーラウンドは今も回り続けているからだ。


今回エジプト外務省は
「エジプトの安定を支援する重要性への理解に欠けており、両国関係に悪影響を及ぼす」
として米国を非難したが、これこそ貧者の恫喝(どうかつ)である。

エジプトは米国の足元を見ているが、米国も対エジプト援助は止められない。

トランプ政権に両国関係は変えられない。

エジプトは良くも悪くも悠久の国だからである。
                   
     ◇

【プロフィル】 宮家邦彦(みやけ・くにひこ)
昭和28(1953)年、神奈川県出身。栄光学園高、東京大学法学部卒。53年外務省入省。中東1課長、在中国大使館公使、中東アフリカ局参事官などを歴任し、平成17年退官。第1次安倍内閣では首相公邸連絡調整官を務めた。現在、立命館大学客員教授、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。

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